- ニュース全般
- 匿名
- 16/02/12 22:08:35
飼い犬が病気で死んだのは治療が適切でなかったためだとして、福岡市内の女性(61)が獣医師に約180万円の損害賠償を求める訴えを近く福岡地裁に起こす。原告側は、診察で子宮の異常が疑われる状態が分かったのに、獣医師が十分な対応をしなかったと主張。「わが子同然の存在を失い、精神的苦痛は非常に大きい」としている。
訴状などによると、女性は2014年5~7月、飼っていた雌の秋田犬に出血などの異常があったため、定期的に通院していた同市の動物病院を受診。7月中旬、獣医師から「(異常が)繰り返されるようなら手術も検討する」と説明された。10日ほどして、突然吐くなど体調が急変。夜間で獣医師と連絡が取れず、別の動物病院で子宮にうみがたまる子宮蓄膿(ちくのう)症と診断されて手術を受けたが、直後に死んだ。8歳だった。
原告側は、14年5月のエコー検査で子宮に液体がたまっていることが判明していたと主張。「少なくとも最後の診察時に子宮蓄膿症と診断でき、手術で救えた可能性があったのに漫然と見過ごした」と慰謝料や葬儀代などを請求している。
女性は夫と2人暮らし。秋田犬の寿命は10年以上とされ、「1日でも長生きしてほしいと定期的に通院していた。子犬のころから育て、生活の全てを共にしてきた子ども同然の存在だった」と話している。
獣医師は西日本新聞の取材に対し「代理人を通じて話し合いを続けており、取材には応じられない」としている。
「家族の一員」、慰謝料高額化
ペットの医療をめぐるトラブルは増え続けており、各地で訴訟に発展するケースも起きている。ペットは法的には「物」。かつては飼い主に認められる慰謝料は低く抑えられていたが、近年は「子どものようにかわいがっていた」などと飼い主の強い愛情が配慮され、高額化する傾向にある。
国民生活センターによると、医療や美容などペットのサービスに関わる相談は2014年度で624件。
10年間で約1・8倍になり、過去最多だった。このうち医療関係が約6割で「手術で障害が残った」「帝王切開で出産した子犬が、適切に処置されずに死んだ」など医療ミスに絡む相談が目立つという。同センターは「ペットを家族同然に思う飼い主が増え、健康や医療への関心が高まっている」と分析する。
ペットの医療過誤に詳しい渋谷寛弁護士(東京)によると、こうした傾向は訴訟にも影響している。物の損害は時価相当額が賠償されれば、慰謝料は認められないのが原則。命があるペットの場合は特別に飼い主の精神的苦痛が考慮され、死んだケースだと以前は5万円程度の慰謝料が認められてきたが、増額傾向にあるという。
東京地裁は04年、飼い犬を失った夫婦が医療ミスを訴えた判決で「子どものようにかわいがり、かけがえのないものとなっていた。精神的苦痛は非常に大きい」として60万円の慰謝料を認定。宇都宮地裁も02年、医療過誤訴訟で「家族の一員ともいうべき愛情を注いでいた」と慰謝料20万円を認めた。
渋谷弁護士に寄せられるペットの医療過誤の相談はこの10年で約10倍になったといい、「今後、訴訟も増える可能性がある」と話している。
=2016/02/12付 西日本新=
- 0 いいね