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- 12/11/10 11:18:00
路上の注射器、わいせつDVD露店の脇を登校する児童…改革・西成の教育現場
産経新聞 11月10日(土)10時41分配信
「ほら、ありましたよ」
10月下旬の午前7時半すぎ。ひんやりした空気が漂う大阪市西成区の小学校前で、ジャージーに長靴姿の校長が指差した先に注射器が落ちていた。「覚醒剤を打った跡ですわ。児童が拾ってくることもあるんで登校前に掃除するんですよ」
■ごみ掃除と安否確認
教員の朝は正門周辺の歩道の清掃から始まる。空き缶、吸い殻、段ボールに布団…。あらゆるゴミのほか人糞(じんぷん)が落ちていることもある。「夏は臭いがひどくてね」。校長はそう言って歩道に水をまき、犬の糞をほうきで押し流した。
正門の斜め前にある露店には、中古のわいせつDVDが所狭しと並べられ、日雇い仕事にあぶれたのだろうか、50歳ぐらいの男性がカップ酒を片手に品定めをしている。そのすぐ脇を児童が笑顔で登校してきた。
朝礼が始まっても登校してこない児童の自宅には、教員が出向く。保護者から事前に連絡がない場合は、安否確認も兼ねて迎えに行かなければならない。「いつでも出動できるように、こんな格好してるんですわ」。ジャージー姿の校長が笑った。
■突出する生活保護
日雇い労働者の街「あいりん地区」を抱える西成区は、大阪市の中でも生活保護受給率や65歳以上の高齢者数が突出している。市や区の統計によると、生活保護受給者の割合(今年8月現在)は、市全体の「18人に1人」に対し、西成区は「4人に1人」。高齢化率(昨年10月現在)は34・8%で、市平均(22・8%)を大きく上回る。
「西成が変われば大阪が変わる」。西成を大阪全体の縮図ととらえる橋下徹大阪市長は、そうした信念から「西成特区構想」を掲げ、13回の有識者会議を経て10月に報告書がまとめられた。
■理想と現実のはざま
西成区を文教地区化し、子育て世帯の流入を図る-。構想では、現役世代を意識した施策を強化し、教育振興策の充実に最も力を入れている。文教地区計画はその一環で、最大の目玉となるのが、平成27年度開校予定の小中一貫校の設置。橋下市長は、私立進学校並みに教育内容を充実させた「スーパー校」を目指すと訴える。
だが、目の前には厳しい現実がある。同区のある教員がため息交じりにつぶやく。「スーパー校なんて絵空事。西成では学校に連れてくるところから始めなあかん。市長はそんな現実を知ってるんやろうか」
橋下市長や松井一郎大阪府知事が力を入れる大阪の教育改革。「グレートリセット」の高い理念を掲げるが、現場との間には温度差も見受けられる。両氏が掲げる目玉施策をめぐる課題を見つめる。
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