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- 小早川隆景
- 20/10/22 09:49:46
日本学術会議、問われる存在意義 軍事・防衛研究に反対だけでなく世界トップの素粒子研究も“不支持” 国防ジャーナリスト小笠原理恵氏が緊急寄稿
2020.10.19
日本学術会議には、さまざまな問題がありそうだ日本学術会議には、さまざまな問題がありそうだ
小笠原理恵氏
菅義偉首相が、新会員候補6人の任命を見送った政府機関「日本学術会議」に注目が集まっている。左派野党やメディアは「任命拒否だ」と大騒ぎし、政府・自民党は「民営化」を含めた行政改革の検討を始めた。年間10億円以上の税金が投入される学術会議の深刻な問題点とは何なのか。国防ジャーナリストの小笠原理恵氏が緊急寄稿した。
学術会議は、1950年と67年、2017年に「軍事目的のための科学研究を行わない」という趣旨の声明を出している。日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなるなか、特定の政治勢力の影響なのか、あまりにも固執している。インターネットやGPSなど、軍事・防衛研究から始まった先端技術は数えきれない。
では、学術会議が民生研究では効果的な活動をしているのかというと、そうとは思えないケースがある。
わが国は素粒子の研究では、世界のトップクラスを走っている。この分野の最先端テーマであるヒッグス粒子や、宇宙を構成するダークマター(暗黒物質)などを解明するため、日米欧などの物理学者が東北・北上山地に巨大実験装置の次世代加速器「ILC(国際リニアコライダー)」を誘致・建設する計画がある。
高エネルギー加速器研究機構の吉岡正和名誉教授は「日本は経済大国ですが、意外なことに、これまで大規模な国際プロジェクトをホストした経験はありません。ILCが日本に立地すれば、それは我が国で初めての経験となります」と、宮城県気仙沼市のHPで語っている。
ところが、日本学術会議は18年12月、「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」で、「支持するには至らない」と反対。今年1月、重要な大型研究プロジェクトをまとめた「マスタープラン2020」でも、「重点大型研究計画」に選ばなかった。
産経新聞は今年2月4日の主張「次世代加速器 未来見据えて政治決断を」で、日本学術会議の判断に異議を唱えている。日本が降りれば、中国がこの計画の覇権を握るだろう。
日本学術会議は、軍事・防衛研究に徹底反対しているが、政府では現在、国際秩序の変動を乗り切るためにつくられた「統合イノベーション戦略推進会議」が司令塔として機能している。安倍晋三前首相によって18年、安全保障と一体となった経済政策を推進する会議として設置された。当時の議長は、官房長官だった菅首相である。
推進会議では、総合科学・イノベーションや、高度情報通信ネットワーク、知的財産、健康・医療、宇宙開発および海洋並びに地理空間情報などの重要な科学技術戦略が調整されている。さらに、優れた科学技術分野や研究者を発見し、具体的な予算や人材を配分し、研究成果を守り、社会に実装させるまでの政策を関係府省庁と連携して講じている。
自民党は14日、日本学術会議の在り方を検討するプロジェクトチーム(PT)の役員会を党本部で初開催した。見送り問題とは別に、学術会議は、その存在意義が根本から怪しくなっているのだ。
■小笠原理恵(おがさわら・りえ) 国防ジャーナリスト。1964年、香川県生まれ。関西外国語大学卒。広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」代表。現在、日刊SPA!で「自衛隊ができない100のこと」を連載中。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/201019/pol2010190002-n1.html
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