雑居ビルでの女性殺人事件は容疑者死亡で捜査に幕、真相は闇の中へ　小川泰平氏が事件の流れを解説

熊本市内の雑居ビルで今年５月、派遣社員辰島ありささん＝当時（２９）＝の遺体が布に包まれた状態で見つかった事件で、熊本県警は３０日、殺人と死体遺棄の疑いで、事件後に死亡しているのが見つかった熊本市中央区、会社員松原聡容疑者＝当時（３１）＝を被疑者死亡で書類送検した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はデイリースポーツの取材に対し、容疑者が特定された経緯や事件の詳細を推測した。

　県警によると、辰島さんは５月２８日午前１時ごろにアルバイトを退勤し、交際相手に「帰る」とスマートフォンでメッセージを送信。その後、連絡が付かなくなり、２９日夜、雑居ビルで遺体が見つかった。松原容疑者はビルのエレベーターの保守点検を請け負っていた会社の社員で、自殺とみられている。

　小川氏は事件現場を２度取材した。容疑者を特定した経緯について、「防犯カメラの追跡に加えて、現場では、今となっては松原容疑者だと思われるのですが、作業着姿の者が１階の右側のエレベーター前に立っていて、外に出てもまた戻ってきて…という動きも含めて、その場所にいたという話も実際に出ていました。そういうところを総合的に判断したということだと思います」と説明した。

　また、辰島さん着用の服から松原容疑者のＤＮＡが検出されており、小川氏は「浮上した容疑者のＤＮＡと照合することは難しいことではなく、それが、容疑者を特定する決め手になったのだと思います」と補足した。

　２人は近くに住んでいたが、面識はなかったという。捜査関係者によると、辰島さんが現場となったビルの前を通り過ぎたところ、松原容疑者が後を追って声をかけ、ビルの中に呼び込んだとみられている。同容疑者とみられる人物は２時間ほど前からビル１階のエレベーター付近にいたことが住民に目撃されていた。

　その点について、小川氏は「『面識はなかった』ということですので、容疑者が被害者のアルバイト先のお客ではないと思われます。また、この付近は深夜１時過ぎに１人で歩いている女性どころか、人通りもほとんどないことから、たまたま歩いていた被害者を連れ込んだのではなく、この場所で待ち伏せしていた容疑者の計画性を感じます。この被害女性が過去に何度か、このビル前を通ることを知っていての犯行であったといえる」と推測した。

　さらに、小川氏は「このビルの中に連れ込めば空き部屋がある。現場となった７階に通じるエレベーターは鍵が必要で、その鍵は自分しか持っていない。被害女性がビルの前を通り過ぎた後、声を掛けたとしても、それだけで着いてくるとは思えないので、何か凶器等を示して脅かし、中に連れ込んだのではないかとも考えています」と付け加えた。

　一方で、被害者の体を布で巻いた容疑者の心理はどのようなものだったのだろうか。

　小川氏は「ご遺体を移動させるため、何かで包んで運びやすくするためではないかと考えられます。後は、顔を見たくないということで布で巻いた可能性もある。さらに、誰か人が来た時にすぐ発見されないよう、人目に付かないようにするためということが考えられる」と解説した。

　だが、容疑者は死亡し、書類送検になった。小川氏は「書類送検した時点で捜査は完了です。今回は３カ月、時間を要したが、容疑者が亡くなっていなければ身柄を拘束して逮捕し、取調べを行い、起訴になり裁判員裁判で裁かれるはずであったが、被疑者死亡で書類送検なので起訴されことはない。殺害の動機等も闇の中である」と説明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0e0915443cc5c3df2d763b7abf439e4b0521c748