• No.1 トルクメニスタン・マナト

    23/02/01 13:57:34

     WSJの記事は、ワクチンを繰り返し接種するとXBB株に感染しやすくなる可能性を強調している。同株は昨夏に第7波を招いたオミクロン「BA.5株」の1.47倍の感染力があるとされている。日本でも今後感染拡大の可能性があるだけに心配は募る。二木医師はこう語る。

    「WSJに書かれているように、XBB株はワクチンの免疫をすり抜けるように変異しているのでしょう。ですが、ウイルスというのはそういうもので、以前から多くの研究者によって指摘されていました。たしかに今まで打っていたワクチンの効果が落ちていくでしょうが、それがイコール『接種回数が増えるほど感染しやすい』ということにはならない。この仮説は飛躍しすぎです。

     またWSJの記事では、武漢株とオミクロン株に対応する『二価ワクチン』(オミクロン株対応)について〈ブースター接種してもXBB株に対しては、抗体はほんのわずかしか増加しない〉という『Cell』の論文内容も紹介されている。これは裏を返せば“XBB株に対してわずかではあるが追加接種の効果はある”ということ。

     記事内の別の論文では、二価ワクチンがオミクロン株に感染するリスクを30%減らすことにも言及しています。ですが、日本ではそうしたプラスの面に触れることなく、クリーブランド・クリニックの研究論文の『接種するほどかかりやすい』という部分だけが一人歩きしている」

     国内でも二価ワクチンによる追加接種の有効性を示すデータは多数示されている。

     国立感染症研究所は、従来型のワクチンを2回以上接種したうえで二価ワクチンを追加接種した場合、発症を防ぐ効果は71%であると発表し、厚生労働省の資料も二価ワクチンによる追加接種について、〈短い期間である可能性はあるものの、発症予防効果や感染予防効果が期待されています〉としている。

    ◆日本だけが真面目に検査

     世界で最も接種率が高い日本で現在感染が高止まりしている状況についてはどう考えればいいか。二木医師が言う。

    「これまで日本のコロナ対策は世界的に見れば中国のようなゼロコロナ政策に近く、行動制限やワクチンを用いて各国と比較して感染者を少なく抑え込んできました。しかし昨年初めに感染力は強いが毒性は弱いオミクロン株が登場して以降、第6波、第7波で死亡率が下がり、昨秋からの第8波で政府は明らかに経済活動を優先する方向に舵を切りました。

     感染対策の緩和が進んだことで、人々が飲食をはじめとする感染リスクのある行動様式に戻り始めた。そうしたことで感染が拡大している。ワクチンを打っている回数と関連づけるのは無理があるでしょう」

     先んじて経済活動を再開していた欧米に比べて、第5波(2021年7~9月)の頃までの日本の感染者は桁違いに少なく、「ジャパン・ミラクル」と呼ばれていた。その反動がいま現われているという指摘だ。

     また各国との検査数の違いも、統計に表われる感染者数の差に関係がありそうだ。ナビタスクリニック理事長で医師の久住英二氏が語る。

    「オミクロン株の弱毒化に伴って、多くの国はコロナを“風邪”として扱い、検査して正確に統計を取ることをやめました。イギリスなどは人口比に対して、新規感染者数はかなり少ないですが、コロナを押さえ込めているかというと決してそうではない。

     対して日本はほかの国々と比較して、非常に真面目に検査を受け続けている。こうした事情もあるため、各国の統計が感染の実態を正確に表わしているとは言い切れない」

     重要なのは、“何のためにワクチンを打つか”ということだ。日本ウイルス学会理事で長崎大学大学院教授の森内浩幸医師が語る。

    「ワクチンを打つ最大の目的は重症化を防ぎ、死者を減らすことです。この先、ウイルスがXBB株に置き換わった際に、現状のデータによると二価ワクチンの追加接種で重症化

    を防ぐことができる可能性がある。

     重症化予防の観点からも、若くて健康な人たちを除き、『ワクチンをやめるべきだ』と勧めるのは暴論です」

     コロナとの戦いも4年目に入り、様々な研究や論文が発表されている。どの情報が正しいのか、今後も真摯に向き合っていく必要がある。

    ※週刊ポスト2023年2月10・17日号

    https://www.news-postseven.com/archives/20230130_1836215.html?DETAI

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