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- 参宮線
- 21/12/27 07:15:04
愛猫が鳴いてすり寄ってくると、コレを望んでいるな、というのはある程度はわかるもの。でも、今なぜ鳴き続けているの?という場面はないだろうか。もともと猫はあまり鳴かない動物らしい。どういうときに鳴くものなのか、専門家に聞いた。
いきなりの愛猫語りで恐縮だが、20歳まで生きた筆者の猫、がじらは、隣近所に響くほどのダミ声で鳴くメスのキジトラだった。子猫らしからぬダミ声のあまり、怪獣のゴジラが名前の由来になったほどである。
猫が鳴くとき、「ごはんが欲しい」「トイレが汚い」「遊んで」の訴えは、行動や状況から察する飼い主は多いだろう。しかし、鳴く理由がわからないことも少なくない。がじらも夜になると玄関の外に向かってギャオギャオ鳴くので、近所迷惑になるとハラハラしていた。
黒白ハチワレのハッチ君(1歳)と茶トラのハニ君(1歳)と暮らすサンポさん(仮名)は鳴く意味を知りたくて、スマホアプリの「にゃんトーク」を利用したことがある。
「ハニに比べて、ハッチはつかみどころがない性格。夜に電気を消して寝ようとすると、ウロウロして鳴くんです。かといって、一緒に寝るわけでもない。彼が何を言いたいのかが知りたくて、アプリを使ってみました」
結果を聞くと「2匹とも当たっているかどうか、よくわからない」と笑う。わかりやすい性格のハニ君が明らかにごはんを求めているのに、「こんにちは」「やぁ」と翻訳されるなど、状況に合わない言葉が並んだからだ。
履歴を見せてもらい、私はがくぜんとした。ハッチ君の声は「あなたが必要よ」「愛する人、聞こえてる?」「無視しないで」に翻訳され、筆者の「駄猫」にはない愛情あふれる言葉が並んでいた。
わが家の猫たちは「邪魔しないで!」「だらだらしてる」「イライラする」など、不機嫌な言葉が多く、極めつきは、「超激おこぷんぷん!!」である。日々、下僕として振り回されているのに、飼い主への言葉は、これほど情が薄いのか。
うなだれた私は猫の鳴き声の真相を探るべく、帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科准教授の加隈良枝先生を訪ねた。加隈先生は、応用動物行動学、人と動物の関係学などが専門だ。現在は、オス猫のトム君(17歳)と暮らしている。加隈先生が話す。
「単独で暮らす習性の猫は、犬のように集団で暮らす動物とは違い、もともとあまり鳴きません。鳴いて仲間に危険や食べ物のありかを知らせる必要がないからです。猫が他の猫に対してコミュニケーションの目的で意味のある鳴き声を発するのは、発情したときやケンカのときくらいです」
そうした習性がありながら、飼い主に向かって鳴くのは、子猫の頃、母猫に空腹を訴えたり、ぬくもりを求めたりしていた名残ではないかという。
「たまたま声を出したときに飼い主さんに気づいてもらえて、要求が通ったことを学習した可能性があります。その成功体験から、要求があるときには鳴いて訴えるという行動につながっているのではないでしょうか」
そして、猫が鳴くたびに飼い主が要求を満たすと、成功の記憶が強化されていく。つまり、猫が人をしつける状態になる。
飼い主が満たせる範囲の要求であればいいが、困るのは深夜に大声で鳴かれたり、長い時間、理由がわからないまま鳴き続けられたりするときだ。
問題行動を解決するには、「要求を満たさずに無視すること」と加隈先生はアドバイスする。
猫には人間の行動や言葉の意味はわからない。鳴き声に反応していると、鳴けば要求が満たされる部分だけが記憶に残り、問題行動が強化されてしまう。防ぐには、飼い主はぐっと我慢し、知らぬふりをするといい。かなりの根比べになりそうだ。
(中略)
猫にはいまだ謎が多い。鳴き声の意味を知ろうと右往左往する飼い主を眺めながら、猫はしてやったりと思ったり、あきれたりしているのかもしれない。(ライター・角田奈穂子)
※週刊朝日 2021年12月31日号 https://dot.asahi.com/wa/2021122200037.html?page=1
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