ネック
秋篠宮家長女・眞子さま(29)と小室圭さん(30)の結婚について、ワイドショーの中で最も批判的な放送をしてきたのが、フジテレビの「バイキングMORE」だろう。10月4日放送で司会の坂上忍氏は、「誹謗中傷が問題外っていうのは、当たり前である」と述べたが、これまで番組内での誹謗中傷についての言及はなかった。過去の出演者の発言に行き過ぎがなかったのか、それについてどう考えるかを語るべきだったのではないか。
「バイキング」での誹謗中傷とは、次のようなものである。
9月27日の放送で、フリーアナウンサーの高橋真麻氏は、「(ニューヨークでのフジテレビの直撃取材を受けた時の小室さんの態度について)ああいう時に、本人の本性というか、素が出ると思うんですね。一言、別に立ち止まって、『私はお話しすることができません。申し訳ありません』って言えばいいのに、イヤホンしたままガン無視しながらあんな行くなんて、考えられないです」、「(小室さんが秋篠宮家に挨拶へ行かないという推察について)自分の信念曲げてでも頭下げられない奴が、夫として大丈夫かなあという気持ちになっちゃうんですよね」とコメントしていた。
お笑いコンビ「おぎやはぎ」の小木博明氏は9月29日の放送で、「あのちょんまげ、ニューヨークで侍パークみたいの作って、ひと稼ぎするんじゃないか。弁護士の試験落ちて、チャンバラみたいの1日2回公演やって……。だから、ああいうふうに伸ばしているんじゃないかと俺は思っている」
「本性」「素が出る」「ガン無視」「頭下げられない奴」「大丈夫かなあ」「ちょんまげ」「侍パーク作って」「ひと稼ぎするんじゃないか」「弁護士の試験落ちて」……。正当な評価や批判と誹謗中傷は、相手の人格を重んじているかどうかで線が引かれる。高橋氏、小木氏の発言が正当な評論の範囲なのか、揶揄に基づいた小室さんへの侮辱なのか、明らかであるように思える。
坂上氏は「会見見て怖いなあと思ったのは、医師の人が『周囲の方々からの温かい見守りがあれば、ご健康の回復がさらに速やかに進むものと考えられます』っておっしゃったんですけれども、たぶんこの言葉を受けるとテレビは配慮に動くんだろうなって。そういう方向に進まざるを得ないだろうな。逆に言うと、ネットというものは過熱化する危険性がある」、「こういう時、テレビとかネットとかを悪者にするのは簡単なこと」と話した。
宮内庁の発表の仕方が、言論の自由の萎縮効果を持ってしまうのではという懸念は、私も強く同意する。私たちがなすべきは、この事態を受けて、天皇制の議論を進めることである。
金銭トラブルがこじれた要因
しかしながら、この問題について、小室さんの母親の金銭トラブルや小室さんの言動・キャラクターという興味本位の局面にフォーカスし、前向きな天皇制議論をしてこなかったのは「バイキング」ではないか。そもそも、「バイキング」は、人権への「配慮」は行っていなかったのか。
坂上氏は、小室さんの母親の元婚約者についても触れ、彼のやり方が100パーセントほめられたものとも思っていないとしたものの、彼の思いが封鎖されることになりはしないか、年齢的にも経済的にも弱者だからメディアしか頼るところがなかったと述べた。
元婚約者と小室さんの母親は、現在、代理人同士で話し合いが続いている。ここまでこじれたのは、協議の内容が、元婚約者側から一方的にメディアに取り上げられたことも大きな要因である。メディアが私人間の金銭トラブルについて、ここまで微細に触れる必要がそもそもあったのか、それについてもお考えを聞きたかった。
秋篠宮さまが言う「多くの人が納得し喜んでくれている状況」が訪れなかったのは、メディアの過剰報道も一因である。ネット上の誹謗中傷がテレビ番組によって誘発されている。
ただ、高橋真麻氏は「我々も眞子さまに幸せになってもらいたくて、よかれと思って言ったことが結局、逆に傷つけてしまったのは『本当に反省すべきだな』ということはあるんですけれども」、「生まれた時からずっと人の目に晒されて、幼少期からどこに行ってもバシャバシャ写真撮られて、思春期のやだなって思った時もあったでしょう。ずっと晒されてきて、改めて『皇室に生まれるって、大変だな』、そこを忘れてたなって」とも述べている。
高橋氏の個人的な「反省」ではなく、番組としての見解を聞きたかった。高橋氏の「反省」も、マスメディアに長らく関わってきた人物とは思えない軽さである。
フジテレビ自体、リアリティ番組「テラスハウス」での故・木村花さんの事件の教訓をどう考えているのだろうか。
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No.1 主 ネック
21/10/06 09:52:58
フジテレビに自浄作用がないのであれば、BPO(放送倫理・番組向上機構)放送倫理検証委員会は、バイキングの小室さん報道について、ぜひ審議入りを検討してほしい。
▽森暢平(もり・ようへい) 成城大学文芸学部教授。元毎日新聞記者。著書に『天皇家の財布』(新潮社)、『近代皇室の社会史』(吉川弘文館)、『皇后四代の歴史──昭憲皇太后から美智子皇后まで』(吉川弘文館、共著)、『「地域」から見える天皇制』(吉田書店、共著)などがある。
https://news.yahoo.co.jp/articles/eec486a0b5ec9f6f90dd6dfaf14f0069c56417e8
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