【医師が解説】ワクチン接種と“副反応”情報のウソ･ホント へのコメント（No.10）

ーー「不妊症になるの？」「遺伝子が変化するらしい」といった情報も出回っている。

木下：“このワクチンを打つと不妊になる”というデマは、新しいワクチンが出る度に出回るものだ。アメリカのCDCという公的機関も言っていることだが、今回の新型コロナワクチンも含めて、不妊の原因になったワクチンはただの一つもない。

不妊が起きる原因にはホルモンや排卵周期への影響や、卵巣から子宮への通り道を狭くするといったメカニズムが考えられるが、コロナワクチンはそういうものではないし、動物実験でも不妊にはならないということが分かっているので、心配しなくていい。

不妊だけでなく、流産する、自閉症になるといったデマも出回ってきたが、いずれも10％くらいの確率で起こりうるもの。そういう人を見つけてきて、“ほら、事例があります”と主張するのも簡単だ。払拭するのがなかなか難しいタイプのデマだが、いずれにしろメカニズム的にワクチンが原因で起こることは考えられていないので、やはり安心してもらって大丈夫だ。

ーー妊娠中の接種も大丈夫なのか。

木下：特にお腹が出てくる妊娠後期は普通の肺炎であっても重症化しやすくなるし、仮に人工呼吸器を装着することになれば、その場で帝王切開が必要になる。アメリカでは既に約10万人の妊婦さんが接種していて、流産や先天異常の発生率もワクチンを打たない場合と全く変わらないということがわかってきている。

ーー「DNAワクチンは殺人兵器」「打つと5年以内に死ぬ」などと主張する県議がいることも話題になった。

木下：2002年のSARSの時には“ワクチンを打つと3G通信に繋がる”、2009年の新型インフルエンザの時には“4G通信に繋がる”といった陰謀論のようなことを言っている人がいたし、今回も“コロナワクチンで5G通信に…”と言っている人がいる。そういうことを信じてしまうはいつも一定数いるが、決してマジョリティではない。集団免疫を達成するためには多くの人がワクチンを打たないといけないという観点からも、大きな問題ではない。

ーー必ず2回打った方がいい？

木下：日本に入ってきているものに関しては、どれも2回接種が必要だ。たしかに1回でも効くと言う話も出ているし、短期的には8～9割効くというデータもある。ただ、2回打てば90％は半年後まで効くし、おそらく1年くらいまでは持つ。

ーー最新の正しい情報はどこで確認すればいい?

木下：副反応などが起きた場合は公的機関が必ず説明するので自分から調べにいく必要はないが、厚労省のサイトや我々のようなデータを収集して解釈している医療の専門家が発信するサイト、英語を読めるのであればWHOやCDCのサイトを見るのがいいと思う。ただ、日本の行政はアメリカの公的機関に比べて情報の集め方・出し方があまり上手くないし、医師や公衆衛生の専門家でも情報発信に長けている人は少ない。

一方で、SNS上の報告は真偽の確認のしようがないので、個人のエピソードだけを拾うのはかなり危険だと思ったほうがいい。しかし有名な方などの“自分はワクチンが怖いから打たない”といった情報は広がるのも速く、影響力も大きいので懸念している。そこで我々は日米の医療公衆衛生専門の20名以上でサイトを立ち上げて一般の方にわかりやすく情報を探していただけるような仕組みを作った。ぜひ参考にしていただければと思う。（ABEMA／『ABEMA Prime』より）

https://times.abema.tv/news-article/8659248