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- 元治
- 19/10/06 22:30:24
学校のパンフレットに登場する大学の顔。飼育するのは全国でも珍しい「ヤギ部」の学生たちだ。ヤギをめでるのが主な活動で、春になると入部希望者が殺到するというヤギ部。開学とともに産声を上げた部活の誕生は、大学教授がふと漏らした一言がきっかけだった。
■部員80人の大所帯
校舎前、柵に囲まれた雑草の生い茂る野原。部員たちが内側に入ると、奥の小屋からヤギが口をモグモグ動かしながら出てきた。いずれも雌の白ヤギ5匹。
最年長の「クルミ」が群れをまとめる。
「メイ」は温和な性格で、「コムギ」はマイペース。メイの双子の娘「アズキ」と「キナコ」は人懐っこい性格だ。5匹はともに行動し、小屋と野原を自由に行き来している。
5匹を世話するヤギ部は、現在は約80人もの学生が所属している。農業系の大学ではないため酪農は行っていない。主な活動はヤギの世話をすること。
ヤギの体調管理も重要な任務で、毛が抜けていないか▽体から出血していないか▽目やにが出ていないか-などを確かめている。
経営学部2年で副部長の小坪稔輝さん(20)は「動物と触れ合ってリラックスしたいと思った」と入部理由を明かす。
■開学とともに産声
ヤギ部の設立は開学と同じ平成13年。顧問を務める環境学部の小林朋道教授(動物行動学)が開学直後の講義で、窓の外の造成中のキャンパスを見ながら「広大なキャンパスにはヤギが草をはんでいる姿が似合う」と冗談半分に話したのがきっかけだった。
小林教授を顧問とし、部の設立を申請した。開学直後で一定数の部員と顧問がいれば部の設立が可能で、小林教授は「あとに引けなくなった」。
牧場から雌の小ヤギ1匹を譲り受けて活動を開始。部員たちは初代ヤギに「ヤギコ」と命名し、小屋を建てた。山から取ってきた草をエサに、フンは堆肥にしたという。
ところが牧場から「大きくならない種」と聞いていたヤギコは、すくすくと成長。在来種のシバヤギの一般的な体重約20キロの倍以上の約50キロになり、角で部員を蹴散らすなどの態度を取るようになったという。
そんなヤギコが変わったのは、部設立から約2年後、名古屋大農学部から同じ雌のシバヤギ「シバコ」が来てからだ。何度追い払っても近づいてくるその姿に、ヤギコは次第に心を許すようになった。
小林教授は「ヤギコとシバコが互いに鼻をツンとあわせている姿を見たときには感動した。それを境に2匹の関係は親密になった」と振り返る。
■ヤギ部のため受験
大学で暮らすヤギたちは評判となり、学校のパンフレットに登場するなど大学の「顔」になった。ヤギ部に入るため同校進学を目指す高校生もいるほどだ。
日本ではかつて多くのヤギが飼われていたが、産業構造の変化などで、今ではほとんど見られなくなった。鳥取県内でもヤギを飼育する所は珍しく、幼稚園児が見学に訪れたり、ヤギによる工場の敷地や休耕田の除草を頼まれたりすることもある。
サークルの目的は、ヤギを通して環境問題を考えたり、その行動を見つめたりすること。環境学部2年の大峯悠理さん(23)は「ヤギは人に慣れると、体をぶつけてきて『かいてくれ』と意思表示をする」と説明する。
小林教授は「家畜化されても野生の性質を持ち合わせているのがヤギの魅力。学生たちには飼育でのハプニングを経験しながら多くのことを学んでほしい」と話す。
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