- なんでも
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音楽シーンを数字で見ていく本連載。第5回目は「米津玄師」を取り上げる。
先日、9thシングル「Flamingo / TEENAGE RIOT」をリリースし、勢いの止まらない米津玄師。ゆえに今回の記事は「せっかくだから米津玄師について何か調べたい」という熱い気持ちだけを原動力に書いている。なので、ファンの方はぜひ一緒に、ファンでない方は二、三歩引いた安全な場所からこの記事を楽しんでいただければと思う。
それでは本題に入っていこう。今回は、米津玄師にまつわるあらゆる言説の中から「米津玄師どこにも行けない説」を取り上げる。
これは「米津玄師の歌詞に『どこにも行けない』というフレーズ入りすぎ問題」とも言い換えられ、ファンにはお馴染みの内容であるばかりか、なんなら本人もTwitterで言及している大人気トピックである。
わはは。 ― 米津玄師 ハチ (@hachi_08)
今回は米津玄師が作詞・作曲を手掛けた公開音源、全101曲を対象に調査。内訳としては「米津玄師」名義の楽曲が75曲、ボーカロイドP「ハチ」名義で発表された楽曲が26曲という構成である。
では、まずは米津玄師が歌詞で「どこにも行けない」というフレーズを使用している曲の割合を見てみたい。
結果を観ると、全曲中「どこにも行けない」「どこへ行こう」「どこに行っても」などのフレーズが出てくる楽曲は31.7%。米津玄師は約3曲に1曲で「どこにも行けていない」という結論になりそうだが……断定するのはまだ早い。
上記の数字はあくまで「どこ・何処」と「行く・行けない」などの歌詞が含まれた曲の割合であり、実際に歌詞を読むとその意味合いのバリエーションは多岐にわたる。
例えば、3rdアルバム『Bremen』収録の「シンデレラグレイ」では<何処へだって行けるような自由なんてほしくはないな>と歌っている一方で、ハチ名義の楽曲「Christmas Morgue」では<何処へでも行けるでしょう>というフレーズが含まれている。つまり(当たり前だが)米津玄師は一様に「どこにも行けない」と歌っているわけではなく、楽曲ごとに「そもそもどこにも行きたくない」「どこにも行けない」「どこにでも行ける気がする」という「どこかへ行く」ことへのモチベーションが少しずつ異なっているというのが実態なのだ。
そういう実態に即して今回は、米津玄師の「どこにも行けない」をさらに詳細に分類してみた。
結果としては、以下となる。
・どこへでも行ける(確信):1曲
・どこかへ行きたい(願望):3曲
・どこへ行こう?(疑問):14曲
・どこにも行かないで(依頼):2曲
・どこにも行きたくない(否定):2曲
・どこにも行けない(断念):9曲
・その他:1曲
こうして分類を見てみると、思った以上に「どこにも行けない」よりは「どこに行こう?」という疑問・問いかけの方が多く、個人的には「全然どこにも行けてないわけではないんだな」と大きなお世話ながら少々安心できる結果だった。また「どこにでも行ける」という前向きなフレーズを含む曲もわずかながら存在しており、「米津玄師どこにも行けない説」は「米津玄師どこに行こうか尋ねてくる説」の方がより正確ではないか、というのが私個人の見解である。
また、せっかくなので「どこにも行けない曲」を、それぞれの分類に従って一覧表として出してみたのが以下である。曲名と該当フレーズを紹介しよう。
1.どこにでも行ける(確信)
「Christmas Morgue」:祈りを蹂躙した何処へ行こう? 何処へでも行けるでしょう
2. どこかへ行きたい(願望)
「LOSER」:もうどこにも行けやしないのに / ただどこでもいいから遠くへ行きたいんだ
「雨の街路に夜行蟲」:君とどこまでも行けるように / 馬鹿みたいに願っているんだ どこにだって行けるんだって
「飛燕」:君のためならば何処へでも行こう
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18/11/29 20:04:12