- ニュース全般
- キャンプ
- 17/08/05 13:21:37
広島への原爆投下をめぐり、韓国の被爆者や被爆2世らが3日、米国政府を相手に、原爆投下を「違法行為」と認めて謝罪し、賠償するよう求める民事調停を韓国南部の大邱(テグ)地裁に申し立てた。不調に終われば、訴訟に踏み切り、米国の原爆投下に対する責任を、司法の場で問う方針だ。
調停を申し立てたのは、5歳の時に広島で被爆した釜山市在住の李曲之(イゴクチ)さん(77)、両親が広島で被爆した韓正淳(ハンジョンスン)さん(58)=大邱市=ら。昨年5月の米オバマ大統領(当時)の広島訪問で「原爆投下への謝罪の言葉」がなかったとして、準備を進めてきた。
申し立てでは、米政府が原爆投下は「違法行為」だったと責任を認める▽米国が保有する被爆者に関する情報を公開し、謝罪する▽被爆者らの実態調査をし、被害回復のための財団を設立して損害賠償する――ことを請求。原爆を投下したB29爆撃機エノラ・ゲイを製造したり、原爆開発で核物質製造に関わったりした米企業3社も相手にしている。
同時に、韓国政府に対しても、韓国の被爆者らが日本に損害賠償を求める権利があると確認するため、日本政府と交渉するよう申し立てた。韓国の憲法裁判所は2011年8月、韓国人被爆者らの賠償請求権をめぐって韓国政府が日本と交渉しないのは「違憲」と決定している。
広島には当時、大邱に近い農村の陜川(ハプチョン)の出身者が大勢暮らし、被爆した。帰郷後も十分な医療や救護を受けられず、朝鮮戦争の混乱や貧困、病苦の中で相次いで死んだ。
申立人の李曲之さんは広島で生まれ、5歳の時に被爆。父と姉を失い、両親の故郷の陜川に戻ったが、病気がちだ。昨夏、取材に応じた李さんは「おかあちゃん」という日本語を覚えており、「原爆に遭って、おかあちゃんにくっついて逃げた。日本人も韓国人もたくさん死んだ」と語った。
被爆2世の韓正淳さんの両親は広島で被爆し、陜川に戻ったが、父は20代で急死した。韓さんは昨年5月、オバマ氏の訪問にあわせて広島を訪れ、「謝罪と賠償を」と声をあげた。オバマ氏は演説で被爆者に「コリアン」がいたことに触れたが、謝罪の言葉はなかった。失望から、法的手続きへの参加を決めたという。(論説委員・中野晃)
- 0 いいね