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殴る蹴るの暴行を加える、顔を浴槽の水に沈める、口や鼻に指を突っ込む……。あまりの激しさから、唯乃ちゃんの呼吸が止まり、人工呼吸をして蘇生させたこともあった。
しかも、あろうことか、2人は虐待の様子を、まるで記念撮影するかのようにチェキ(インスタントカメラ)で撮影していたのだ。
事件が急展開を見せるのは、保奈美のヒモである剛が別件で逮捕されてからだ。
部屋から剛がいなくなり、保奈美もほとんど養育費を入れなくなった。少女2人は、世話をしてもイライラするだけだと話し合い、「唯乃ちゃんの面倒を見るのを完全にやめよう」と話し合った。それはミルクさえ与えないという非情なものだった。
その直後に、保奈美が久しぶりにマンションに戻ってきて唯乃ちゃんを3ヵ月検診のために長野へ連れて行ったが、帰ってきてからはまた2人のもとにもどされたことで、ネグレクトが再開される。そして11月1日の未明に、唯乃ちゃんは体をピンと真っ直ぐに伸ばした状態で、悪臭を放ちながら死亡しているのが、2人によって発見されるのだ。
「やっと死んだか」
119番通報した時、少女2人は「起きたら死んでいた」と説明していた。だが、警察は唯乃ちゃんの死に異変を察し、事件性を疑った。
理由としては、虐待の様子を克明に写した写真が見つかったこと、唯乃ちゃんの首にひも状のもので絞められたような痕が残っていたこと、そして、少女のうちの1人がもう1人が殺したのではないかと証言したことだ。
事情を聞いてみると、唯乃ちゃんが死んだ日の晩、ひとりの少女は風俗店で朝まで働いていたが、もう1人はクラブで遊んだ後に、マンションで唯乃ちゃんと2人きりで部屋に寝ていた。風俗勤めをしていた少女が朝六時過ぎに帰ってきて、唯乃ちゃんが死んでいるのを発見した。その時に、部屋に居た少女はこう言ったらしい。
「やっと(あるいは、「ようやく」)死んだか」
さらに、その後、地元の男友達に「赤ちゃんを殺したというような発言をしていたことが明らかになっている。
こうしたことから、警察は、その晩部屋にいた少女人が、唯乃ちゃんの首を絞めて殺害したのではないかと考えた。そして状況証拠をそろえた上で、傷害致死で起訴したのである。
裁判では事件の当事者たちが代わる代わる証人として立った。だが、彼らの行動や口ぶりは一様に常識を逸脱していた。
唯乃ちゃんを「チビ」と呼び首を絞める等の虐待をした理由を「エクスタシーを感じたから」と豪語し事件の直後には地元の悪友たちとともに集団でラブホテルに行っていたことまで明らかになった。
少なくとも、彼女たちしか唯乃ちゃんの命を守る人はいなかった。にもかかわらず、その自覚がまったくない。赤ん坊の命を命とも思っていない言動だ。
しかし、裁判では密室で起きた事件であるがゆえに、検察側は明確な証拠を十分にそろえることができなかった。そのため、裁判官が出した判決は以下だった。
「無罪」
法の上では唯乃ちゃんの死は誰のせいでもない、とされて片付けられたのである。
続く- 3
17/05/18 20:32:50