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周到な「聖徳太子抹殺計画」 次期指導要領案は看過できない 拓殖大学客員教授・藤岡信勝
2017.2.23 12:00
◆国民に「厩戸王」の定着を狙う
文部科学省は2月14日、次期学習指導要領の改訂案を公表した。その中に、国民として決して看過できない問題がある。日本史上重要な人物で、日本国家自立の精神的よりどころとなった聖徳太子の名を歴史教育から抹殺し、「厩戸王(うまやどのおう)」という呼称に置き換える案が含まれているのである。
聖徳太子(574~622)は、冠位十二階と十七条憲法によって国家の仕組みを整備し、天皇を中心とする国づくりへ前進させた指導者だった。中国大陸との外交では、「日出づる処(ところ)の天子、書を日没する処の天子に致す」という文言で知られる自立外交を展開し、日本が支那の皇帝に服属する華夷秩序に組み込まれるのではなく、独立した国家として発展する理念を示した。
こうして聖徳太子はその後1世紀にわたる日本の古代国家建設の大きな方向付けをした。
そこで当然のことながら、現行の学習指導要領(平成20年)では「聖徳太子の政治」を学習すべき一項目として設け、日本の古代律令国家確立の出発点に位置づける次のような指示が書かれている。
【「律令国家の確立に至るまでの過程」については、『聖徳太子』の政治、大化の改新から律令国家の確立に至るまでの過程を、小学校での学習内容を活用して大きくとらえさせるようにすること】(中学社会歴史的分野「内容の取扱い」の項。二重カギは引用者)
この一文は改訂案でもそのまま踏襲されているのだが、ただ1カ所、右の「聖徳太子」が「厩戸王(聖徳太子)」に突如として置き換えられたのである。
括弧を使ったこの書き方の意味するところは、「厩戸王」が正式な歴史用語であるが、すぐには誰のことかわからない者もいるので、それは一般には聖徳太子と呼ばれてきた人物のことだ、と注記をしたというものである。
ということは、新学習指導要領とそれに基づく歴史教科書によって「厩戸王」が国民の間に定着すれば、次期改訂ではこの注記は無くしてしまえるということになる。
◆反日左翼に利用される珍説
改訂案は、小学校ではこの表記の前後を入れ替えて「聖徳太子(厩戸王)」と教えることにするという。学校段階に応じて「厩戸王」という呼称に順次慣れさせ、「聖徳太子」の呼称をフェイド・アウトさせる。周到な「聖徳太子抹殺計画」といえるだろう。
なぜこんなことになったのか。その根拠は、今から20年近く前に、日本史学界の一部で唱えられた「聖徳太子虚構説」と呼ばれる学説だ。その説は「王族の一人として厩戸王という人物が実在したことは確かであるが」「『日本書紀』や法隆寺の史料は、厩戸王(聖徳太子)の死後一世紀ものちの奈良時代に作られたものである。それ故、〈聖徳太子〉は架空の人物である」(大山誠一『〈聖徳太子〉の誕生』平成11年)と主張する。
しかし、この説には根拠が乏しい。「聖徳太子」は100年以上たってから使われた称号だが、核となる「聖徳」という美称は、『日本書紀』以前に出現しているからだ。この学説が公表されたあとも、「聖徳太子」の名を冠した書物はたくさん出版されている。
>>1に続く
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