- 下話
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ゆりの返事を待たず慎吾の部屋のフロアに着いた。玄関を開けると、「変わってないね…」と呟いた『もっと言うことあるでしょ笑』と慎吾が笑った。
その笑顔を見て何故か涙が溢れた。
そっと優しくキスをする慎吾。
甘く優しいキスにゆりはこれまでの事を思い返した…
この2年、ゆりにとっては激動だった。
1つが離婚。
冷めきった夫婦の結婚生活はあっけなく終わった。
さらにもう1つ…
親権問題。
ゆりには一人息子がおり、何が何でも手放したくなかった。
しかし調停はゆりにとってとても不利だった
相手の養育環境の方が遥かに良いこと、継母になる人も息子に対し、血の繋がりを越えた愛情を注いでること、そして彼女は子供を宿す事が無理な事も…
何より母親として、いつでも子供に触れられることを私に与えてくれた。
住む場所が違えどこれまで同様親子の関係は一切変わらないのなら…生活レベルを変えなくて我が子が愛情感じて育っていけるのなら…とゆりは一人ぼっちの人生がスタートしていた。
でもそれは慎吾に伝えるつもりはない。
私は母親。アイドルの相手として不釣り合い。
だから今日も…
慎吾と体の関係だけでも、それでもいい。
そんな切ない気持ちがゆりを支配していた。
甘い優しいキスがどんどん激しくなる…
慎吾は時折唇を離しては何か言いたそうな表情で見つめてくる…
が、何も言わずにベッドルームへと向かう二人。
その部屋もまたあの日と何も変わらず迎えてくれた…
慎吾の唇、体で感じる慎吾の体温、部屋中に香る慎吾の匂い、ゆりの下半身はそれだけで蜜を纏って潤っていた
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15/02/02 22:52:37